広島県尾道市は、「坂の町」「寺の町」として知られる独特の景観と文化を持つ街です。細い坂道や石段が入り組んだ町並みの中には、多くの古刹が点在し、どこか懐かしい情緒が漂います。その中心となる「千光寺」は、市街と瀬戸内海を一望できる絶景スポットとして人気。寺巡りと坂道散策を組み合わせれば、尾道の魅力を余すことなく体感できるでしょう。今回は、千光寺を中心にした尾道の坂道と寺巡りの旅をご紹介します。

尾道市ってどんなところ?
尾道市は広島県東部、瀬戸内海に面した港町です。古くから海運で栄え、文学や映画の舞台としても有名で、多くの芸術家や文人に愛されてきました。市街地は山と海に挟まれ、坂道や石段が続く独特の街並みを形成しています。こうした地形は寺社や古民家と調和し、観光地として訪れる人々に「懐かしさ」と「新鮮さ」を同時に感じさせるのが魅力です。

時間帯で変わる尾道の風景

尾道は港町・坂の町・島が見える瀬戸内の風景などを抱えており、朝・昼・夕・夜で光と影、静けさと活気が大きく変わります。
早朝は海面と渡船の静かな行き来、港のクレーンや造船所が朝霧/朝日の中にシルエットを描く時間。人通りが少なく、路地や坂の石畳などに柔らかな光が差す風景が静謐です。
昼間になると、尾道駅周辺の商店街・カフェ、ONOMICHI U2などの施設が賑わい、眩しい日差しと海風・潮の香りが混ざった街の活気が感じられます。
夕方には千光寺山展望から見る夕陽、尾道水道や島影がオレンジ〜ピンクに染まり、坂道を下ると影が長く伸び町並みのコントラストが強くなります。
夜は港の灯り、渡船の明かり、建物の窓明かり、小道の外灯、そして星空も見えればなお良し、昼間とは違うしっとりした尾道らしい風情が漂います。
文化・体験スポット

尾道には歴史・アート・文学・サイクリングなど多彩な文化体験スポットがあります。
- 尾道市立美術館 (Onomichi City Museum of Art):安藤忠雄設計の建築としても注目されており、瀬戸内海を望むテラス付き。地元ゆかりの作品や展覧会が楽しめます。
- 平山郁夫美術館:日本画家・平山郁夫の作品を中心展示。美術の静かな時間を持ちたいときに。
- Senkō-ji / 千光寺・千光寺ロープウェイ:古刹・展望スポットとして、坂を上る体験と町と海を一望できる景観が魅力。桜の季節や紅葉の時期にも映える。
- 本通り商店街・尾道本通り:レトロな町並みの買い物・食べ歩きの定番。古い商家・軒先・カフェ・雑貨屋など、町歩きで文化を感じられる。
千光寺の魅力
尾道の代表的な観光スポットである千光寺は、標高約140mの千光寺山中腹に位置しています。本堂からは尾道水道や瀬戸内海の島々、市街地の街並みを一望でき、その景観は「尾道三山八景」にも数えられるほど。
境内には岩に建てられた舞台造りの本堂や、願い事を込めて石を投げる「玉の岩」、縁結びのご利益があるとされる「愛染明王堂」など、多彩な見どころがあります。参拝と同時に自然や歴史を体感できるのが千光寺の大きな魅力です。

坂道と寺巡りの楽しみ
尾道の魅力は、千光寺だけでなく、坂道に点在する数々の寺院を巡ることでより深く味わえます。
- 天寧寺:三重塔が特徴的で、尾道のシンボル的存在。
- 西國寺:仁王門や大きな石段があり、古刹として格式の高い寺院。
- 浄土寺:国宝の本堂と多宝塔を有し、歴史的価値の高い寺院。
これらの寺院は坂道や細い路地でつながっており、散策そのものが尾道らしい体験です。歩きながら猫と出会えるのも楽しみのひとつで、坂道と寺社、そして猫のいる風景は尾道を象徴する情景として観光客に人気です。

文学と芸術に彩られた街
尾道は文学や映画の舞台としても知られています。志賀直哉の小説『暗夜行路』や大林宣彦監督の「尾道三部作」など、多くの作品に尾道の風景が登場しました。坂道や寺院、そして瀬戸内海の景観が物語や映像に独特の詩情を与えています。
街を歩けば文学碑や映画のロケ地に出会うことができ、芸術的な側面からも尾道を楽しむことができます。

自然と歴史を感じる散策ルート

尾道の自然と歴史を同時に味わえる散歩・散策ルートの提案です。
- 千光寺山散策ルート
尾道駅 → 坂道を登り千光寺ロープウェイまたは徒歩で千光寺山頂へ。展望所から海・町並みを眺めたあと、千光寺・赤堂への参拝、帰りは坂道の町家や猫の細道などを通る。
- 尾道水道‐向島渡船‐海岸線散歩コース
尾道駅前桟橋から渡船に乗り、向島に渡る。島の海岸線、古い漁村道・海風・島の家並みを歩き、対岸の尾道の町並みを海越しに眺める。
- 商店街と文学散策コース
尾道本通りで買い物・食べ歩き → 坂道の文学碑や作家の足跡を探す(尾道ゆかりの文学者・作家の案内看板が多い)→ 隠れ家カフェでひと休み。
- しまなみ海道サイクリング起点+展望スポットコース
ONOMICHI U2 を拠点にサイクリングレンタル → しまなみ海道の入口付近または向島ルートを少し走る → 帰路は夕方の海景展望を楽しみながらゆったり。
尾道グルメを堪能する
寺巡りと坂道散策の合間には、尾道ならではのグルメを楽しむのも魅力です。
- 尾道ラーメン:背脂が浮かぶ醤油ベースのスープが特徴で、全国的に有名。
- 海鮮料理:瀬戸内海で獲れる新鮮な魚介を使った料理。
- 和菓子・スイーツ:寺社参拝の合間に立ち寄れる老舗和菓子店やカフェも点在。
港町らしい食文化を味わいながら散策すれば、旅の満足度が一層高まります。

季節ごとの楽しみ方
尾道は四季を通じて魅力的な景観を見せます。
- 春:桜と寺社、瀬戸内海の組み合わせが絶景。
- 夏:坂道の散策と海風を感じながら港町を歩く。
- 秋:紅葉と歴史的建造物が織りなす風景。
- 冬:澄んだ空気と穏やかな尾道水道の景観を楽しむ。
訪れる時期によって異なる表情を見せるため、リピーターも多いのが尾道の特徴です。

アクセスと便利情報
尾道市へはJR山陽本線「尾道駅」が玄関口で、広島市や岡山市からのアクセスも良好です。千光寺へはロープウェイで山頂まで登り、そこから坂道を下りながら寺社を巡るルートが人気。徒歩でもアクセス可能で、登山気分を楽しみたい人にもおすすめです。

モデルコース提案
日帰りプラン
午前にロープウェイで千光寺に向かい、境内から絶景を堪能。その後は坂道を下りながら天寧寺や浄土寺を参拝し、昼食に尾道ラーメンを楽しむ。午後は文学のこみちを散策し、夕方に港の景色を眺めて帰路へ。
1泊2日プラン
1日目は千光寺と坂道散策を中心に過ごし、夜は海鮮料理や港町の居酒屋で食事。2日目は浄土寺や西國寺を訪れ、尾道の歴史と文化をじっくり堪能するプラン。

モデルコース:尾道をじっくり堪能する一日旅プラン

午前
- 尾道駅に着いたらまず本通り商店街で朝の町歩き。お土産屋・古書店・カフェでのんびりスタート。
- 続いて千光寺山を目指す。ロープウェイ利用または徒歩で登り、展望所で360°の瀬戸内海と島々の眺めを楽しむ。
昼
- 山頂または展望近くの眺めのあるレストランかカフェでランチ。地元食材の海鮮や尾道ラーメンなどがおすすめ。
- 食後、尾道市立美術館へ。安藤忠雄の建築と展示、テラスの見晴らしを楽しむ。
午後
- ONOMICHI U2 に行き、海沿い施設で休憩。カフェ・ショップを巡る。
- 向島渡船で島へ渡り、海岸線を歩いたりサイクリングを少し。島から尾道を海越しに眺める時間を取る。
夕方
- 千光寺山展望地点または尾道水道岸辺で夕陽を待つ。坂の町がオレンジに染まる時間帯を写真に収めたい。
夜
- 尾道駅周辺あるいは本通り商店街近くで夕食。郷土料理・魚介・雰囲気の良い居酒屋など。
- 食後、夜景散歩。渡船が行き交う尾道水道、灯りの灯る坂道、小道の外灯、港の夜景などを味わって締めくくる。
尾道市の坂道と寺巡り:千光寺から眺める絶景の街並みのまとめ
尾道市は、坂道と寺院、そして瀬戸内海の景観が調和する魅力的な街です。千光寺からの絶景をはじめ、坂道に点在する寺院や文学・映画ゆかりのスポットを巡れば、尾道らしさを余すことなく体感できます。グルメや季節ごとの風景も組み合わせれば、日帰りでも宿泊でも充実した旅となるでしょう。


