福岡県飯塚市の炭鉱遺産を巡る旅: 嘉穂劇場と近代史探訪

飯塚市の劇場 福岡県

福岡県飯塚市は、筑豊炭田の中心地として日本の近代化を支えた歴史を持つ街です。炭鉱の繁栄とともに文化や娯楽も発展し、その象徴が現在も残る「嘉穂劇場」。さらに市内各地には炭鉱関連の遺構や資料館があり、街歩きの中で近代史を体感することができます。今回は、飯塚市で炭鉱遺産を巡りながら近代史を探訪する旅をご紹介します。


飯塚市ってどんなところ?

飯塚市の景色

飯塚市は福岡県の中央部に位置し、かつて日本最大級の炭鉱地帯「筑豊炭田」の中心として栄えました。昭和期には炭鉱産業の隆盛で人口が急増し、九州有数の都市として発展。現在は炭鉱閉山後の歴史を観光資源として活かしながら、教育・文化都市としての顔を持っています。

時間帯で変わる飯塚の風景 

飯塚は、時間帯ごとに異なる雰囲気を見せる街で、散策や旅の時間帯に応じて異なる魅力を楽しめます。 

  • 早朝:旧伊藤伝右衛門邸の庭園は、静けさの中で朝の光が水面に映り、贅沢な空気が漂います。花や水の表情も穏やかで、写真撮影にも最適な時間帯です。 
  • 昼間:嘉穂劇場や飯塚市歴史資料館周辺は、観光客や地元の人々でにぎわい、展示や建築の見どころをゆっくり楽しめる時間です。
  • 夕方:遠賀川中の島(なかのしま)やコスモス畑の丘陵地では、夕陽に染まる花々と風景が静謐な詩情を帯び、美しい黄昏時の一幕が広がります。
  • :市街地や花火の季節には、飯塚納涼花火大会のライトアップや、人々が集う夜の風景が温かく活気に満ちあふれます。

文化・体験に触れるスポット 

飯塚市には、歴史的建造物、伝統文化体験、農や自然を活かしたスポットが多数あります。 

  • 旧伊藤伝右衛門邸:炭鉱王・伊藤伝右衛門の邸宅。和洋折衷の建築美と風情ある回遊式庭園が魅力で、国指定重要文化財および名勝に指定されています。柳原白蓮との関係も著名です。
  • 飯塚市歴史資料館:立岩遺跡出土品や炭鉱文化、山本作兵衛の作品、伊藤伝右衛門夫婦関連資料など1,500点を超える展示があり、地域の歴史と生活文化を学ぶことができます。
  • 嘉穂劇場(Kaho Theater):1931年創建の木造芝居小屋。設計や舞台装置に伝統的な技術が生き、登録有形文化財および産業遺産に登録されています。現在は休館中ですが、再開が期待されています。
  • いいづかスポーツ・リゾート ザ・リトリート:自然に囲まれたグランピング・ホテル施設。ジャーニーテントやトレーラー宿泊を含む多様なスタイルがあり、ヨガ、BBQ、温泉に近い癒しの滞在ができます。
  • 大分八幡宮:726年創建と伝わる歴史ある神社。応神天皇・神功皇后を祀り、地域の信仰と歴史に根差しています。 
  • 地元農産物直売所「カホテラス」:新鮮な産直野菜や地場特産、お惣菜を販売。フードコートやレストラン併設で、食と地域資源の魅力が詰まったスポットです。
  • 藁葺屋根の古民家での体験「Saiou Ga Uma no Kai」:藁葺き古民家を再生し、農村体験などを通して伝統的な生活文化に触れるアクティビティが提供されています。

嘉穂劇場を訪ねて

飯塚市の劇場の客席

1931年に開館した木造芝居小屋「嘉穂劇場」は、炭鉱の繁栄を象徴する文化遺産です。

  • 木造2階建て:全国でも数少ない現役の木造芝居小屋。
  • 回り舞台や花道:伝統的な歌舞伎小屋の機構が残されており、往時の雰囲気を味わえる。
  • イベント活用:現在も芝居やコンサート、地域イベントが行われ、市民に愛されています。

炭鉱で働く人々にとって心の拠り所だった劇場は、今もその存在感を放っています。


炭鉱遺産を巡る

飯塚市 旧伊藤伝右衛門邸

飯塚市には、炭鉱の歴史を伝える施設や遺産が点在しています。

  • 旧伊藤伝右衛門邸:炭鉱王と呼ばれた伊藤伝右衛門の邸宅で、豪華な日本建築と庭園が見どころ。
  • 飯塚市歴史資料館:筑豊炭田の歴史や炭鉱の労働環境を学べる展示。
  • 炭鉱住宅跡:かつての労働者の暮らしを伝える長屋や街並みが一部残されています。

これらを巡ることで、炭鉱産業が地域社会に与えた影響を具体的に感じることができます。

自然と歴史を感じる散策ルート 

飯塚が誇る自然風景と産業・歴史遺産を同時に味わえる散策ルートです。 

  • 遠賀川中の島のコスモスや秋桜の丘:遠賀川流域にある中洲に広がるコスモス畑。秋は花のじゅうたんとなり、自然の美しさに包まれます。
  • 白糸の滝と山口茜屋エリア:滝のそばにはわらびが自生し、優雅な景観とマイナスイオンを感じつつ森の中の散策が楽しめます。
  • 八木山高原ピクニカ共和国:高原の草原や花畑、遊具があり、ファミリーや自然派旅行者に人気。リフレッシュ散策に適しています。
  • 八木山観光りんご園:高原の気候を生かしたりんご狩り体験が可能。秋の紅葉と合わせて、果物狩りの魅力を体感できます。
  • 長崎街道内野宿(Nagaski Kaidō Uchu-no-shuku:江戸時代の宿場町としての歴史を残す地区。古い街並みを歩いて歴史に思いを馳せることができます。

産業と街並みの記憶

飯塚市の商店街

炭鉱の繁栄は、飯塚の街並みや文化にも色濃く残っています。

  • 商店街:炭鉱で栄えた頃の面影を残すアーケード街。
  • 赤煉瓦の建物:炭鉱関連施設や倉庫として使われた建物の一部が残る。
  • 地域の祭り:炭鉱労働者とともに発展した祭りや芸能も受け継がれています。

街歩きをするだけで、近代史の足跡を随所に感じられます。


文化と芸術を体感

飯塚市の劇場

飯塚市は炭鉱文化を受け継ぐ芸術の街としても知られています。

  • 嘉穂劇場の公演:伝統芸能から現代音楽まで幅広いイベントが開催。
  • 炭鉱節:炭鉱労働者の歌として生まれ、今も地域の祭りや踊りで披露される。
  • 美術館・ギャラリー:地元ゆかりの作家や炭鉱を題材にした作品展示もあります。

飯塚グルメを楽しむ

飯塚市のホルモン鍋

炭鉱の街として発展した飯塚には、労働者に愛された庶民的なグルメがあります。

  • ホルモン鍋:炭鉱労働者のスタミナ源として親しまれた料理。
  • うどん・ちゃんぽん:炭鉱町ならではのボリューム満点の麺類。
  • 和洋菓子:炭鉱時代に根付いた甘味文化も健在で、老舗菓子店が点在。

散策の合間に味わえば、地域文化の一端を食からも感じられます。


季節ごとの楽しみ方

飯塚市の旧伊藤伝右衛門邸
  • :嘉穂劇場周辺の桜並木散策。
  • :地域の夏祭りで炭鉱節を体感。
  • :紅葉と旧伊藤邸庭園の美しさ。
  • :ホルモン鍋で体を温める食の旅。

アクセスと便利情報

飯塚市の新飯塚駅

飯塚市へは、福岡市からJR筑豊本線で約1時間、車でも都市高速を利用して1時間ほど。市内の観光地はバスやタクシー、レンタサイクルで巡ると効率的です。嘉穂劇場は市街地中心にあり、徒歩でアクセスできるのも魅力です。


モデルコース提案

飯塚市の劇場の客席

日帰りプラン

  • 午前:嘉穂劇場見学 → 商店街散策
  • 昼食:ホルモン鍋ランチ
  • 午後:旧伊藤伝右衛門邸見学 → 飯塚市歴史資料館
  • 夕方:甘味処で休憩 → 帰路へ

1泊2日プラン

  • 1日目:嘉穂劇場 → 炭鉱住宅跡散策 → 郷土料理ディナー&宿泊
  • 2日目:旧伊藤伝右衛門邸 → 炭鉱資料館 → 和菓子店巡り → 帰路へ

モデルコース:文化・自然・体験のバランスを楽しむ一日旅プラン 

地元の歴史、自然、食を満喫できるモデルコースの提案です。 

  1. 早朝:旧伊藤伝右衛門邸の庭園で静かな時間を過ごし、朝の光と池泉風景を楽しむ。 
  1. 午前:飯塚市歴史資料館へ。炭鉱文化と地域の歩みを展示でじっくり学ぶ。 
  1. :カホテラスで地元野菜のランチ&買い物。お惣菜やスイーツもおすすめ。 
  1. 午後前半:Saiou Ga Uma no Kaiで古民家や農村文化の体験を。藁葺屋根の家屋や伝統生活に触れる。 
  1. 午後後半:八木山高原または白糸の滝へ移動し、自然散策。秋ならコスモスや紅葉も楽しめる。 
  1. 夕方:遠賀川中の島に立ち寄り、夕陽と花畑の景色を眺めながらリラックス。 
  1. :季節によっては飯塚納涼花火大会(夏)や筑前の國いいづか街道まつり(秋)など、地域の夜の行事で締めくくり。 福岡県観光情報 クロスロードふくおか+1 

まとめ

飯塚市の劇場の客席

飯塚市は、筑豊炭田の歴史を伝える炭鉱遺産が色濃く残る街です。嘉穂劇場を中心に、旧伊藤伝右衛門邸や資料館を巡れば、炭鉱が地域社会に与えた影響を深く理解できます。さらにホルモン鍋やちゃんぽんといった庶民的なグルメも、歴史の味わいを伝える大切な要素。近代史と文化、食を一度に楽しめる飯塚の旅は、学びと感動を与えてくれる時間となるでしょう

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